私好みの新刊 2024年6月
『はっけん! 小型サンショウウオ』田上正隆他/著 関慎太郎/写真 緑書房
サンショウウオと言えば特別天然記念物の「オオサンショウウオ」が時々話
題にのぼる。長さは1mほどもある大物である。それに比べるとほんとに小さい
長さ10cmほどのサンショウウオが日本各地にたくさん棲んでいることはあまり
知られていない。私たちの里山にも一種いる。野山の水たまりに丸い卵嚢を産
んでいるのをよく見る。
本文最初に小型サンショウウオについて簡単に特徴など書かれている。最初
にメスが卵嚢に産卵しあとでオスがその卵嚢に放精するとのこと、体外受精する。
あとしばらくは分類と各サンショウウオの写真と解説が続く。世界には100種、
日本では50種になるという。サンショウウオは移動する範囲はせまく固有種が
たくさん生まれている。有尾目-サンショウウオ科に分類されている。有尾目に
はサンショウウオ科のほかオオサンショウウオ科とイモリ科がある。44ページ
からサンショウウオの各器官のクローズアップ写真が付けられている。体色も
種により微妙に違う。前足は指5本、後ろ脚は指4本。オスとメスは繁殖期にな
ると尾や総排出口など微妙に違ってくる。幼生(ウーパールーパー)の写真がか
わいい。54ページからヤマトサンショウウオの春夏秋冬の写真。春、なんとメス
は卵嚢の先を木の枝にくっつけて産卵するとか。孵化した幼虫は一時水中でミミ
ズなど食べて過ごす。夏になると再び陸上生活にもどり秋をすごす。冬になると
土に潜って春を待つとか。86ページから小型サンショウウオの飼育方法が書かれ
ている。小型サンショウウオは採集など禁止されている種もあるので注意が必要
とも書かれいる。普通の金魚ケースでいいようだか温度管理等注意がいる。102
ページからとことん小型サンショウウオの項があり50ページを使ってくわしく
書かれている。先にこちらを読んで写真の項を読んでもいい。
2023年10月 2,000円
『きょうりゅうのしっぽ 』「かがくのとも」5月 大島英太郎/さく 福音館書店
恐竜の化石からいろんな形の恐竜が復元されている。恐竜の化石は、いったいほ
ぼ丸ごと見つかるのはごくまれで、たいていは歯とか骨の一部が見つかる程度である。
その化石からまるで当時に生きていたように復元されている。どんな根拠があるの
だろうか。
この本は特徴的な5種の恐竜としっぽを別ページに提示して、どれがどの恐竜の
しっぽか予想させている。まずはディプロドクス、長い無知のようなしっぽが特長
である。敵が襲ってくるとしっぽを振り回して戦ったという。次ははばの広いひれ
のようなしっぽを持ったスビノサウルス、しっぽは何に役立ったのだろうか。なん
と水中で泳ぐ役目だった。次は、大きなハンマーのような尾の先に重りのあるアン
キロサウルス。体も頑丈なうろこでおおわれている。肉食恐竜が襲ってきても
〈ハンマー〉を振りかざして立ち向かう。こんどは、太くて重い尻尾を持つティラ
ノサウルス。この尻尾は大きい胴体を維持して歩くのにちょうどいいバランスにな
っている。最後は、装飾的な長い尾羽を持つカウディプテリクス。前足も一見羽根
に見える変わり者。オスのカウディプテリクスはメスの前でこの飾尾を広げて自慢
するとか。恐竜の尻尾に注目してもいろんな働きが見えてくる。
「恐竜のしっぽの進化」について監修者の言葉として真鍋真さんが折り込み紙に
書いている。「爬虫類から進化した恐竜は尻尾を引きずらなくなったようです。」
「恐竜の中には体のウロコが羽毛になったものがいたこと、さらにすでに翼をもっ
たものがいたことがわかってきました。」「現在では、どこまでが恐竜で、どこから
が鳥類なのか、その境界線を引くのは難しいほど、連続的な進化があったことが明ら
かになっています。」などと恐竜の進化についてくわしく書いている。
本自体は「かがくのとも」で子どもにも読みやすく編集されている。
2023年5月
400円